第7章 深海に沈めて
日が経つにつれて、情けないな、と感じるようになった。
「九瓏せんせ、上の空ですよ。」
「あら、ごめんなさい。何か…ご用事で?」
「いいえ、コーヒー、淹れておきましたので、息抜きでもしてきたらどうです?」
仲のいい職員が俺にコーヒーを差し出した。
「ありがとうございます、ちょっと…風にでも当たりに行ってきます。」
取っ手の付けられた紙カップのコーヒーを受け取り、俺は職員室を出た。
教師に夏休みはない。
部活であったり、新学期の準備であったり、結局なにがしかの理由で学校には来なければならなくて。今日も部活がなく、適度に事務作業を済ませておこうと学校に来たものの。
「なっさけねえ〜」
化学準備室に入って直ぐ、俺は独り言を漏らす。
先日のアキラの驚いた表情を思い出し、がりがりと頭を掻いた。
(生徒に心中お察しされるなんてな、)
まあ、付き合いも長いけど、なんて自分を宥めつつ。
正直な所、それでも彼女はアキラを選ばないと思っていた。
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