第5章 あまく やさしく もどかしく
("先生として、じゃなかったんですか?")
彼女の言いそびれた言葉の続きを考える。
女の子らしさに気付いた俺の、気持ちの奥底に気付いて彼女は拒絶したのだろうか。
もう一度ソファに腰かけ、俺は煙草に火をつけた。
「情けねえ~」
心のどこかで、期待していた。
彼女が俺に恋心を抱いている、という事を。
(あんなに、アキラに心乱されてるじゃないか)
どうせ生徒と教師だ。
馬鹿な想いはかき消して、生徒の青春を見守ろう。
(あんな小娘に乱されるなんて、俺としたことがどうしたんだか。)
ここは、俺の立ち入る世界じゃない。
「部活、見に行かないと…」
重い身体を起こそうとしたが、半分以上残っている煙草を見て、辞める。
(もーちょっと、このまま)
この煙が消えるころには、気持ちも落ち着くだろう。
「…どーせ、生徒と教師なんだから、ね」
(続)