第5章 あまく やさしく もどかしく
「神田の男らしくてさばさばしたところも素敵だけど、こういう女の子らしい所、アキラが見つけてくれたんだろうね。」
そういう、女の子らしいところをみんなに知ってほしかった。そしたらのクラスでの居場所も、あれほど高嶺にはならないはずだ、そう思っていたはずなのに。
(そういう、女の子らしい所は、俺にだけ見せてほしかった)
何の気なしに話したその一言から、彼女の反応はなくなる。
暫く経った後、彼女は小さく、か細い声で俺を呼んだ。
「…せんせ、」
「ん?なーに?」
その気持ちの悪い間にすこし動揺しながらも、大人げない独占欲を、煙草の火と共に消す。
「”先生”、として…」
けれど、見上げた先の彼女の瞳は、想像以上に不安に揺れていて
「、ちゃん…?」
名前を呼ぶと、彼女ははっと我に返った。
「あ、すいませ…。もう6時前なんで、帰ります。」
「ん、了解。いつもありがとうな。」
たばこ、付け加えるように言った後、小さく笑った。
「いー友達もいっぱいいるんだから、あんま抱え込まない事!」
たちあがり、くしゃ、と彼女の頭を撫でた
「また、明日な!」
返事もなく、弾かれるように教室を出た彼女の背中を追うように、わずかに開いたドアの隙間をぼんやりと見る。
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