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深海のリトルクライ(アルスマグナ/九瓏ケント)

第4章 混ざり合って、紫




「ありがとう。」

あの日、抱きしめ返し、私は彼の耳元でそうささやいた。

「でも、やっぱり、ダメだ。」
「……。」

私はゆっくりとアキラから離れる。

「先生の事、好きなまま、付き合えないよ。」

私にとって、それだけアキラが大事ということだった。
そんな中途半端な気持ちで付き合いたくない、ただそれだけだった。

「一か月。」
「…え?」

アキラは人差し指を立てて、私の方を見た。

「一か月だけ、ちょっと近くで過ごさせてよ。」
「ア、キラ?」
「もー夏休みじゃん、センセ―にも会えないんだろ?」

先生に会えない、その言葉にうっと詰まる。

「でも、中途半端な気持ちで、アキラの近くにいるなんて」
「だー違えの!もうこれは俺のワガママ!突き通させて!それに…」

別に、やましいことはしねーし、とぼそりとアキラは付け加える。

よく見れば、アキラの顔は…耳まで真っ赤に染まっていて

「誰にもウチらの関係は言わなくていい…ちょっとだけ、特別枠にしてよ。」
「でも」
「俺にもチャンス頂戴。ちったぁ俺の事好きなんだろお前!」

なんてぶしつけな物言い…まあ、アキラらしくていいんだけど。

「いや、そう、だ、けどさ…」

「」



「好き、だ。」



アキラの目は、どうしてこうも真っ直ぐなのか。

気付けば、私は小さく頷いていた。



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