第4章 混ざり合って、紫
期末テストという事もあってか、突然準備室を飛び出した日以来、先生から煙草のお誘いはなかった。廊下ですれ違っても、ホームルームでも、あのジェスチャーをされることはなかった。
「…?」
「あー、聞いてる聞いてる。明日、15時に駅前、だよね?」
「そ!部活伸びたらまた言うわ、じゃ。」
「おー」
「…また今日の夜連絡するわ。部活いってくる!」
にっと、いつも通り歯を見せて笑って、アキラは教室を出た。
(あの笑顔は、反則。)
ほんの少し頬が緩む感じがして、ぎゅっと口を引き締める。
机の横に掛けていたリュックを背負って一度立ち上がったものの。
「あ~…」
もう一度席に座り、うなだれる。
(なんつーか、平穏、訪れないかな。)
分かっている、超が付くほどわがままな願いだということぐらい。
泉に次ぐクラストップのモテ男、アキラの告白を保留し、
学校内で狙うもの多数の先生へ片想い。
(やっぱり、こんなやりかたズルイよ…)
机にごつん、とおでこを付ける。
「…アキラの馬鹿」
「恋煩い?」
「!!」
1人きりだと思っていた教室で、別の人の声が聞こえて、私は飛び起きた。