第3章 寂寥の青と純真の赤
期末テストももうすぐだね。なんて他愛ない話を紡いでいたけれど、いままでよりも、ぐっと近づいた距離感とか、触れ合う肩とか、かすめる手のせいで、鼓動が落ち着くことはなかった。
寮の近くまで来た時、アキラはふと立ち止まり、私を見つめた。
「…。」
名前を呼ばれて、振り返ると、その真っ直ぐな瞳が、私をとらえて離さなかった。
「…なに?」
「お試しでいい、嫌がることはしない、から」
アキラが大きく息を吸う。
「…付き合って、みない?」
街灯が照らす赤髪が、小さく揺れた。
「弱みに、漬け込むみたいで、お前の言う通りズルいのかもしんない。でも、卒業までは、告白しねーんだろ?」
「…そ、うだけど…」
「じゃあその間、なにすんの、ずっと考え込むのか?」
「そ、うなる…ね」
「…でもそれじゃあ…切ないんだろ?泣くほど。」
「…」
「嫌だったら、すぐ、別れる、から。」
アキラは恐る恐る、私をあの日みたいに抱きしめる。
「そんな顔してる、お前、見たくない。」
回された腕が、震えているのが分かった。
涼しい夏の風のせいで、彼のぬくもりが良く伝わる。
「マジで、…心配っつーか、ほんと…辛ぇ…」
彼らしくない、今にも泣きそうな声。
回された腕に、ぎゅっと力が入る。
「わがままなのは、分かってるけど…!」
「…アキラ。」
私は、彼の体に腕を回し、小さく囁いた。
「 」
(続)