第3章 寂寥の青と純真の赤
「よ。」
「…よ。」
ベンチに腰掛けるアキラにつられて、右手を挙げる。
「ほい、の好きなやつ。」
「お!あんがと。」
差し出されたジュースを受け取り、何でもないように笑う。
「その~、まず、アレだ。今日は、突然ごめん。」
アキラは正面を向いたまま、言葉を紡ぐ。
「最近になって、急に、ホラ…」
その顔がどんどん下がって、アキラの手元のスポーツドリンクに視線が落ちる。
「先生と、親しげにしてて、…悔しかった。」
私は、アキラの事が好きだし、アキラも私の事が好きだという確信をもって過ごしていた、でも、その好きは、恋愛感情に限りなく近くて遠いような、そんな曖昧な感情で。
だけどこの時、男女の友情は、すれ違い続ける愛情であり、永遠の片想いとはよく言ったものだなと痛感した。
(なんでも真っ直ぐ言えるアキラのことは、すごく憧れていたし)
そういう部分に、とても魅力を感じていたのも事実で。
先生と、あんなふうに出会っていなければ、彼に恋する可能性は十二分にあったという事は自負している。感情は二分されなくて、グラデーションの様に染まる。
心地よくて、愛おしくて。そんな彼への気持ちは、そのとても微妙な所にあって。
「俺だって、親友で居たかった。だったらも俺の事好きでいてくれるって分かってた」
もちろん、友達として、な。とアキラは付け足した。
「でも、あんなふうに、されちゃ。俺も、耐えられなくて。」
大人げなくて、ごめん。
アキラらしくない、か細い声が漏れる。
その後、顔がやっとあがって、やっと彼の瞳をとらえた。
「ずるいってわかってるけど、やっぱの近くに、居たい。」
それはいつもの、まっすぐな、綺麗な瞳で。
私は、思わず、泣いた。