第2章 生き延びなきゃ
「…あ…」
ウォール・ローゼへ逃げ込んだ翌日、私はまたも信じられないものを目にした。
それは、食料の配給でのこと。
1日分は…小ぶりのパン1つ。
よく考えれば当たり前だ、急に壁が壊され土地も奪われ、ローゼに大量の人が逃げ込んたとなれば食料不足にもなる。
配給の行列からやっと抜け出し、倉庫の入口の段差に母と二人で座る。
俯いていると、母は自分の貴重なパンの半分を私に手渡した。
驚いて母を見ると、優しい笑顔を浮かべていた。
「お母さんはいいから。食べなさい」
「何してんの…!?ダメだよ!」
慌てて返し、体ごと外を向く。
その行動が、母が生きることを諦めたように思えてしまった。
「絶対、ダメだから…2人でちゃんと生き延びよう?」
「…そうね…」
思っていたことがつい声に出てしまったが、母は本当にそう思っていたらしく、弱々しい声が聞こえた。