第1章 今日
「荷物を捨てろ!一人でも多く乗せるんだ!!」
自分の荷物を捨てた駐屯兵が、大きな声で叫んだ。
今いるのは、船の上。無事に母と2人で乗り込むことができたのだ。
しかし、安心してはいけない。
船へと渡された橋が、2人の駐屯兵によって上げられてしまった。
たちまち周りから声が上がる。
「お…オイ!何してんだ!」
「この船はもう満員だ!出航する!」
「そんな…!!子供だけでも!」
「っ…!嘘、もう乗れないの…!?」
「…仕方がないよ…ほら、座ってなさい」
「…」
母に言われ、膝を抱えて座った。
苦しくなって、涙がひとつ、頬を伝っていった。
「ウォール・マリアが…!!」
誰かがそう叫び、恐る恐る顔を上げる。
その視線の先には、普通ではない巨人が、ウォール•マリアの門を壊し、立っていた。
「そんな…」
「まただ…また人類は…巨人に食い尽くされる…」
どよめきが船上を覆った。
こうして、100年の平和は、今日、壊されてしまったのだった。