第1章 今日
大通りに出ると、更に人が増えた。
はぐれてしまわないよう、必死に母の手を握る。
一際大きな悲鳴がする方を向くと、壁の破片に潰されて血の海が出来ているのが見えた。
すぐに顔を逸らし、一刻も早くウォール・マリアから出ようと強く思った。
しかし、それもそう上手くいかない。
大きく地響きがして、振り返ると、壁の穴から巨人が入ってきたところだった。
「お、っ母さん!!!…巨人、達がっ!!」
もう息が切れ、必死に母に訴える。
母も後ろを振り返ると、青ざめた顔で、更にスピードを上げた。
怖い、怖い、怖い、怖い。
やだ、死にたくない、助けて。
もう一度後ろを振り返ると、いつの間にか、あの大きな巨人はいなくなっていた。