第1章 今日
たちまち木霊する、悲鳴。
壁から離れていく人々。
そんな人間達を嘲笑うかのように、その巨人は、
壁をひと蹴りし、穴を開けたのだ。
一瞬何が何だかわからず、壁の破片が飛んできても立ち尽くすだけだった。
「!!早く、逃げるわよ!!!」
「っ、な、何が起こったの!?」
母の声で我に返り、飛び降りるように階段を下りた。
「巨人が…!!壁を壊したの!!」
「…!!」
夢ではない。これは、現実だ。
母に腕を引かれながら、家を飛び出した。
「何で、今日なの…!?」
「…お父さん…!!」
母の震える声が聞こえ、父が仕事に行っていることを思い出す。
父は今、何の仕事をしているかは聞いていないが、ウォール・マリアの南東方面に行っているらしい。
目に涙が溜まってきて、周りの景色が歪んで見えた。