第2章 姉と弟
「朝霧君は何を食べる?」
『カレーライスで。』
「亜門君もカレーでいいかい?」
「あ、はい!」
「金は払っておくから席を確保しといてくれ。」
「はい!」
場所は変わって、食堂。
私たちは食事をとるために(親睦を深めるのもあるのだろう)来ていた。
食事代は一番先輩である真戸さんが払ってくれた。
亜門さんが席を確保している間、私は真戸さんと一緒に食事を運べるように待機していた。
「すまないがこれを運んでくれないか?」
『はい。』
渡されたのはカレーが1つ入ったお盆。
真戸さんはカレー2つをお盆に入れている。
どうやら全員カレーを食べるらしい。
食堂は嫌いだ。
むせ返りそうになる食べ物の臭い。
それだけでも耐えきれないというのに更にこれを食べるとなると・・・考えるだけでも吐き気がする。
しかし、こんなことを言ってたら人間の中に紛れるなんて不可能だ。
『お待たせしました、持ってきましたよ。』
「あぁ、わざわざすまない。」
『いえ。』
後から真戸さんが来て皆で席に座る。
4人席に座っており、私から見て前が亜門さん、亜門さんの隣が真戸さんのとなっている。
「じゃあ、食べるとするか。」
『はい。』
そして、一人一人別々にいただきます。と食べる時の挨拶をして皆カレーを一口頬張る。
広がる独特の味・・・、今すぐ吐き出したくなるのを必死に何事もないかのように演じ、食べる。
生憎、元から表情が豊かじゃないのがここでは役に立つ。
すると亜門さんが口の中にあるものを飲み込むように急いで水を飲み始める。
その様子を見て、これはチャンスだと思い私も急いでカレーを呑み込むように水を飲む。
「真戸さん!また、カレーを辛くするように食堂の方に頼んだんですか!?」
「おや、やはり甘いものが好きな亜門君には厳しかったかな。・・・いや、朝霧君すまない。君も辛いのが苦手だったんだな。」
『はい。』
「とても美味しいと思うのだが」
「美味しいと思うのは真戸さんだけですよ!」
どうやら、このカレーは辛かったらしい。
なんとかこれを理由にあまり食べなくても良さそうだ。
真戸さんはわざとカレーを辛くすることによって私の気を紛らわそうとしてくれたのだろうか?
私がこの雰囲気に早く馴染めるように・・・。