第39章 燈
「一様……っ」
「新選組と共に在ることではなく、俺が今心の底から望んでいるのは……お前と共に生きていくことなのだから」
斎藤の言葉が、志摩子の心の中へと溶けていく。志摩子は頬に感じる斎藤の手に、自らの手を重ねた。微笑みながら、けれどはらりと涙を流しながら。
「嬉しい……ですっ、一様にそう思って頂けるなんて……私も、私もなのです。ずっと貴方のことばかり考えていました。遠く離れていても、一様がどうしているのか気になって不安になりました。もうこのまま、会えなくなってしまうような気がして……怖かったのです」
やっと、想いは此処に。
「私も、貴方が好きです」
志摩子の言葉を聞いた斎藤は、少しだけ顔色を変えて……ぎゅっと志摩子を抱きしめた。彼に背に、志摩子は手を回す。
「もう、離しはしない。俺の命が続く限り、俺が志摩子を……守り続けよう。だから俺の手を、けして離さないでほしい」
「……はいっ」
何も二人を邪魔できないかのように、静かな時が流れていく。先程の戦いが、まるで嘘のようだ。僅かに覗く月が、部屋をゆらゆらと照らす。
突然騒々しい音が近付いて来ることに気付き、斎藤はそっと抱きしめていた腕を解いた。
「千鶴っ!!」
「ひ、土方さん!?」
飛び込んできたのは土方だった。所々傷を負いながら、けれど千鶴の姿を見つけるとほっとしたように息を吐いた。
「無事か……よかった」
「はい! えっと、斎藤さんが来てくれたお陰で」
「斎藤が……?」
土方は千鶴に歩み寄って、斎藤へと視線を向けた。そこには志摩子と寄り添う斎藤がいて、心なしか嬉しそうな志摩子の表情が見て取れて。土方は苦笑い交じりにぽつり、心の中で呟く。
――よかったな、志摩子。
土方の言葉が、志摩子自身に届くことはない。