第38章 動
城の中もまた、羅刹で埋め尽くされていた。斬り倒しながら、斎藤は志摩子がいるであろう最上階を目指す。城内はすぐに斎藤の侵入により、大騒ぎになり始める。と言っても、城の中に羅刹以外の兵は見えない。まさに羅刹の城。随分と上へ登って来たところで、まるで立ちはだかるように山南が姿を現した。
「山南さん……っ!」
「お久しぶりですね、斎藤君。お元気でしたか?」
「……どうしてあんたが、こんなところにいる。やはり綱道さんと手を組んでいるのか?」
「おや、もう情報を耳にしているのですね。そうですか、そうですか。では呑気に構えている暇もないよう……ですねっ!」
羅刹の姿をなった山南が、斎藤へと斬りかかる。瞬時に刃を受け止めるが、やはり羅刹の力は凄まじいもの。心なしか、斎藤が押され気味のような気がする。深く踏み込んで、なんとか斎藤は山南の刃を振り払った。
「まさか、斎藤君が彼女のために此処までやってくるとは思いもしませんでしたよ」
「……志摩子は無事なのだろうな」
「ええ、勿論です。彼女は……この羅刹を率いる新しい鬼の世を統べる姫君となるのですから!!」
「……何?」
「雪村君もこちら側にいます。彼女は、風間と結ばれ子を産む道具となるのです」
「……っ、山南さん!」
斎藤が深く斬りこむ、だが山南もしっかりとそれに応戦する。
「一君! 避けろっ!!」
「……っ」
声の反応し、斎藤が避けたかと思えば藤堂が飛び出して山南と応戦し始める。まさか藤堂が現れるとは思っていなかった斎藤は、思わず目を丸くした。
「平助!?」
「此処は俺に任せて、一君は志摩子のことを頼む! この先の最上階にいる。早く行ってくれ!!」
「……っ、わかった。平助、無事でいろよ」
「ははっ、当たり前じゃん? 任せとけって!!」
斎藤はふっと微笑むと、いつもの藤堂の様子に安堵する。だがすぐに気を引き締めて、再び最上階を目指し駆け上がっていく。
この先にあるのは、悲劇か。それとも、喜劇か。