第38章 動
「斎藤、行けるか?」
「無論だ」
二人で目配せをすると、一気に裏口へと乗り込む。鬼である風間はやはり力が人並み以上、すぐに羅刹を蹴散らしていく。斎藤も劣ってはいない。鮮やかな剣術ですぐに羅刹を薙ぎ払う。一瞬のうちに一掃したところで、裏口から城へと入ろうとする。だが、その場に立ちはだかる影が一つ。
「ふん、現れたか。蓮水栄」
「おう……風間の坊主か。どうした、こんなところまで。探しものか?」
「白々しい奴だ。斎藤、貴様は先に行け。此処は俺が引き受けてやろう。どの道栄も護身鬼、倒さねばならん相手だ」
「わかった。恩に着る」
「ふんっ、人間に着せられる恩などない」
憎まれ口を叩きながらも、風間は栄と対峙する。その隙に斎藤は城の中へと入っていった。視線だけ栄は斎藤に向けるが、追いかける様子はなかった。
「どうした、奴を追いかけないのか」
「風間の坊主。お前を今此処で倒しておかなければ、後々面倒のようだからな。俺達は護身鬼として、志摩子を守り続ける。永遠にだ! だからその邪魔をさせるわけにはいかん!!」
栄は本来の鬼の姿となり、風間と斬り合い始める。風間は鬼の姿にはならず、余裕の表情で栄の攻撃を受けていた。
「貴様ら鬼が、変若水を飲んだ愚行は許すまじこと。風間の名において、永久に葬り去ってやろう……ッ!」
満月の夜。月の下で、鬼同士の戦いが静かに幕を開けた。