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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第35章 誓



「ねぇ、その手を離してくれるかな?」

「……、誰だ!!?」


 天が顔を上げた途端、私の身体が天から引き離され後ろの誰かに優しく抱きしめられる。後ろにいる人物は、引き離したと同時に天のお腹を思い切り蹴った。その衝撃で、天は自らの後方へと飛ばされる。


「ほんと、志摩子ちゃんって油断も隙もないよね」

「その声は……っ! 総司様!?」


 私が勢いよく振り返れば、確かに総司様のはずなのに……その姿に驚愕した。


「総司様……その、お姿は?」

「ああ、これ? 君を守るために、僕が選んだ道だよ」


 白髪の髪、赤い瞳。これは羅刹特有の症状そのものだった。彼は……あの変若水を飲んでいたのだ。


「どうして……っ!?」

「ずっと、考えていた。君を守るためには、僕はどうすればいいのかなって。満足に刀を振るうことも出来ない、寝ているばかりだ。そんな僕が、君を守るためには……羅刹になるしかなかった。もっとも、羅刹になったからって病気が完治するわけじゃないみたいだけどね」

「総司様……っ、そんな……無茶はなさらないで下さい!」

「え? やだよ」


 くすっと総司様は笑うと、私を離し刀を構え後ろ手に私を隠す。


「好きな子のためなら、無茶くらいするでしょ」


 彼の背中は、今までよりもずっと逞しく見えた。

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