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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第30章 劔



「千鶴を迎えに。それから、蓮水家志摩子を……捕えるためです」


 羅刹が志摩子へと襲い掛かる……! だが、鬼の血からの一つ"千里眼"を発動している志摩子には、羅刹の動きさえも容易く読み取れてしまう。


「ほぉ、これが千里眼の力ですが。その"目"をくりぬいて、私に移植でもすれば私も同じ力が使えるようになるのでしょうか?」

「……!? そんな非現実的なこと、出来るはずがありません!!」

「どうでしょうか? やってみないと、わかりませんよねぇ」


 くつくつと楽しげに喉を鳴らす綱道を見て、志摩子は悟る。あの人は本当に鬼なのだと、情も何もない欲望に塗れた鬼だ。目の前に利益にしか目がなく、その為だけに志摩子を殺そうとしているのだ。……そんな者に、殺されてなるものかっ!

 志摩子は踵を返し、再び走り始める。だが彼女の退路を断つように、南雲が追い付いてきたのだ。


「諦めなよ、今この屯所に隊士は誰もいない」

「え……?」

「もしかして、まだわかんないの?」


 南雲はにんまりと笑うと、志摩子の傍にあった襖の一つを開けてやる。志摩子は恐る恐る視線をやれば、そこには血まみれで斬られ首を垂れながら死んでいる隊士の姿。


「……ッ!!?」

「お前の話している間に、僕らの羅刹隊が大方片付けたよ。今頃、他の隊士達はどうかな?」

「ひっ、酷い! 千鶴様と私が狙いなのであれば、私達だけを狙えばいい! それなのに、何故このような惨いことが出来るというのです!? それでも、誇り高き鬼の一族の末裔ですか!?」

「お前みたいな何も守れない、何も出来ない女鬼に言われる筋合いはないね! お前を殺して、その血を使ってもっと質のいい羅刹を生み出す研究材料になってもらうよ。ほら、少しは誰かの役に立てる……!!」


 反応が遅れた……! 今度こそ、志摩子に向かって刀が振り下ろされる。一拍避けるのが遅れたせいで、直撃とはいかなかったものの志摩子の肩を銀色の刃が斬る。

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