• テキストサイズ

薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第23章 華



「では私が、舞と三味線をご披露致します」


 志摩子は君菊に合図を送ると、三味線と舞の準備を整えてもらう。三味線を渡された時に、君菊にぼそっと声をかけられる。


「志摩子はん、あんた……芸なんて出来るんかい?」

「教養として身に着けております。ご安心を」


 志摩子は三味線を構えると、一度目を閉じそして……そっと開ける。弦が弾かれる、一つ一つ丁寧に……三味線の音が部屋を満たし始める。

 先程まで騒いでいた誰もが、突然動きを止め志摩子の演奏に聞き入っていた。奏でられる三味線の音は、弾き流れ鮮やかに。見事、と言える。君菊もこれには驚き、嬉しそうに彼女を眺めていた。


 演奏が終われば、近くにいた芸妓に三味線を変わってもらい次は舞を踊り始める。三味線の音に合わせて、美しくも鮮やかに舞う姿はまるで天女のようだった。

 この世のものでないような、神々しさを放ちながら誰もが時間を忘れて舞に見惚れていた。


「綺麗……だなぁ」


 浪士の一人がそう呟いた。

 ゆっくりと舞が終わると、場は喝采に満ちる。志摩子は深々と頭を下げた。


「やるじゃねぇかあんた! ほれ、こっちに御酌してくれ!!」

「俺にも頼む!!」


 志摩子のお陰で、千鶴はなんとか難を逃れることが出来た。志摩子は笑顔で御酌をしながら、浪士達の相手をしていた。上手く面倒そうなことをかわしながら、千鶴は自分もまけない様にとそう思うのだった。

 暫くして、浪士達が不穏な会話を始める。

/ 359ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp