第22章 遙
「勿論恥ずかしいという気持ちはありましたが、嫌だという気持ちはありませんでしたよ。ふふ、一様といると私は時間を忘れてしまうほど、穏やかな時を過ごせます」
「……俺も、同じだ。志摩子といる時間が、いつの間にかかけがえのないものになりつつある。時は移ろう、そして人もまた変わっていく。けれど……この時間だけは、変わらないでいてほしいものだ」
淡い夕焼けが、都を包み込む。何度目の夕陽だろう、そんなことを志摩子は考えていた。肩を並べて静かに歩けば、すれ違う人達が不意に二人の絵になる光景に思わず振り返る。
勿論二人がそんなことに気付くはずもないのだが。
「季節は何度もやってくる、だが同じ時は二度とない。忘れたくない……」
「一様?」
「知っているか、志摩子。伊東さんが、新選組に不満のある者達を陰で集めていることに」
「え? いえ……知りません」
「噂では新選組を二つに割り、不満のある者達を引き抜いて伊東一派を作るつもりではないかと言われている」
「新選組を二つに割るのですか? ですが、そんなこと歳三様が許すはずありません」
「どうだろうな……。人はけして同じではない、様々な思想が集えば異なる考えにいつしかどちらかが妥協できなくなれば、別れるしかあるまい」
斎藤の真っ直ぐな瞳が、夕焼けを写し橙色に染まる。