第19章 道
「兄様……ッ!」
「志摩子……時が満ちた頃。新月の夜、再びお前を迎えに来る。その時は大人しく、俺に従え」
声だけが残され、その場にいた全ての者達へと届いては消えていく。訪れた静寂に、けれど誰も動き出そうとはしなかった。
志摩子は一人、その場で崩れ落ちるように座り込んだ。
「志摩子……っ」
それを合図にするように、斎藤は振り返り志摩子を支えた。土方達も心配そうに志摩子の元へと集まっていく。
「おい、大丈夫か志摩子」
「……はい。一様に、歳三様。私は大丈夫です、申し訳ありません」
「なんで志摩子が謝るんだよ! 悪いのはあの変な奴だろ!? 気にする事ねぇって」
「そうそう。志摩子ちゃんは、なぁんも気にすることはねぇよ」
「平助様……左之様。ありがとう……ございます」
「斎藤、お前は志摩子を部屋に運んでやれ」
「了解致しました」
土方の命で斎藤は志摩子を抱き上げると、彼女の部屋へと向かった。場に残された者達は顔を見合わせ、言葉を掛け合う。
「土方さん……あの栄って奴、何者なんだろう」
「はぁ……めんどくせぇな、次から次へと」
「でもよ! 志摩子に何かあった時は、絶対守ろうぜ! な!?」
「……ったく、平助は元気だな」
「はあ!? じゃあ、左之さんは元気じゃないわけ!?」
「あーあ、その若さが欲しいなぁ」
「なんだよそれっ!」
土方は一人栄が消えていった方角を見つめていた。二人に聞こえない様に、そっと呟く。