第9章 8日目
──...を、求...
「っ!?」
日付が変わってすぐ、酷い頭痛にうなされ飛び起きた。頭を殴られるような痛みと共に誰かが耳元で何かを囁いているような気がした。
──こっち
外から声が聞こえた。
誰もいないのを確認し、私は家から飛び出て声がする方に走って行った。
するとそこは大きな蔵。獲物を保管しておく為に使われている。
──はやく
女の人の声だった。
私は急いで蔵の扉を開け放つと、そこには二人の男がいた。盗賊か?ならば先程の声は盗賊に襲われている女の助けを求める声だったのか。
いや...私はこの男達を、知っている。
「...こんばんは」
「.....!!」
静かに息を呑むような音が聞こえ、暗闇に目がなれてきた時にようやくその正体に気がついた。
「さ、佐助っ」
「ちゃん!」
よく見ると隣には風魔が座り込んでいる。二人共手足に怪我を負っているようだ。
「よかった!無事だったんですね...!」
「言ったろ?俺様達は死なないって」
そういえばそんな事を言っていた。死にたくても死ねない体になった...そんなことを教えてくれたのだった。ならばこうしてぴんぴんしていてもおかしくない。
「凶王さんも今は疲れて寝てるけど、怪我としては軽いよ」
彼は回復力が異様に早いらしく、もう全身殆どの怪我が完治に向かっているらしい。
だがどうしてか、幸村の姿が見えなかった。
「旦那は、目が覚めないんだ」
風魔と佐助が座り込んでいる近くには誰かが横たわっていた。それが幸村だとわかると、息をしていてくれているんだという喜びと私をその瞳に映していないんだという悲しみが同時に溢れてきた。
「なんでか体が冷たくってさ。俺様達よりだいぶ玉受けたからだと思うんだわ」
幸村の体からは赤い液体が溢れていて、止まるところを知らないようだった。ここまで流れ続けても死ぬ事はないらしいが、こうなってしまうと相当辛いだろう。
──血を
「...?」
──与えよ
「誰か、呼んでる...!」
私は立ち上がり、開けっ放しの扉に振り返る。
──我の血を
「台車に幸村のせます!!」
その声の正体を、私はすぐに理解をした。
「ま、まさか」
「幸村を、助けたいんです」
きっと私までもが彼らと同じようになってしまうと分かったのだろう。
そう、私も、獣に。