第2章 1日目
「ごめん、なさ、」
「女...?」
姿を確認しないままお互いに警戒しあっているまま、私は声を漏らしてしまった。
漏れた息と共に声まで出てしまうなんて、こんな状況まで追い詰められたことの無かった私はなんだかんだ助かるのではないかと油断していたようだった。
でも、ここで黙ってはますます疑われてしまう。敵意がない事を相手に示さねばならない。
「私っ、迷ってしまって....!」
「....そう殺気を飛ばすな、怖がっておろう」
「で、でもさ」
会話する声を聞いて2人だということが分かった。それに声質は若い方、おそらく私と同年代か少し上だろう。
「怖がらせて申し訳ない、出てきては、くれないだろうか」
何もせぬ、と念を押してくれた。私は正直、そんなもの信用できなかったが、相手に敵意はないのではないかと判断した。
獲物を撃ち殺してきたお父さんの後ろをついてまわってきたのだ。多少の殺気はわかるつもりである。
「あっ、は、はい」
私は猟銃を強く抱きかかえて足元に気をつけながら出入り口付近に近づいた。
近づく事にあちらの2人の影が大きくなっていって本当にそこにいるのだと分かった。そう理解するのが怖くもあったが、心細かったので少しだけ安心したところもあった。
その足元に伸びた影を目で追い、私は顔をあげた。
そこには、今までに見たことがないほど美しい人が居た。いや、人なのか正確には私にはわからなかった。
妖艶な雰囲気を身にまとい、こちらを見下ろす長身の男性。
その横には幼い顔を持ちながらもしなやかな筋肉を腕につけ、仁王立ちをしている男性。
「......狩人、か」
長身の男性はこちらに殺気を飛ばしている。目はギラついていて、今にも飛び掛ってきそうな金色だ。
「...その銃をお捨てくだされ」
幼さが残るその横の男性は、その飛び掛らんとする男性を静止しながらこちらの様子を伺っている。
赤い目は、まるで炎が揺れているようで綺麗だった。