第1章 0日目
「いいか、お前は将来狩人となってこの森の悪い動物を退治するんだ」
「はい、パパ」
私は物心ついた時から猟銃を抱えて森の中へお父さんの後ろをついて歩いていた。
勿論幼い頃はその猟銃を何に使うのかわからなくて、悪い動物を退治するんだということしか認識しなかった。
私が住むこの村には狩人が大半を占めていて、その狩人のおかげで村の生計が立っている。なので狩人になるということは誇らしい事。
小鳥や兎、鹿を主に狩っていて、運がいいと熊がとれるといった具合。
「今年でお前も猟銃を持って10年か、そろそろ大きな獲物を捕らえてもいいんだがな」
そういってお父さんは私の頭を優しく撫でる。
大きな獲物。私は今迄熊を撃った事がない。小さな獲物でさえもまともにとれない。それは何故だか、罪悪感が銃を構えると芽生えてしまうから。
「...うん」
女だろうが男だろうが、この村で狩人となった人は猟銃を持ってから10年以内に大きな獲物を捕らえなければならない。そうでないと追い出されてしまうのだとか。
お父さんは猟銃を持ってから4年、お爺ちゃんは3年、隣の幼馴染みはついこの間、9年目で熊を捕らえた。
なのに私はしっかりとした功績をまだ報告できずにいる。
「仕方が無い、森の奥にな、小屋があるんだ。1週間そこで修行しなさい。」
「...うん、わかった」
この村から少し離れたところに、古い小屋があるのだという。その存在に私は気がついていた。
長い間獲物が取れない奴はそこで修行をする、そういう噂を聞いたことがあった。まさか本当だったなんて.....。
「いって、きます」
まだ薄暗い時間に、泣きながら見送ってくれるお母さんと、励ましてくれるお父さんの姿を背に村を出た。
正直いつか功績を残せるだろうと甘く見ていた。でも現実は甘くなくて、生ぬるい性格の私がおいていかれるのは当たり前だったのかもしれない。