第7章 * "Great King"
「……及川さん、随分おモテになるんですね」
「まぁね〜!」
鼻高々にピースしてみせる及川さん。
なんだろう、この人はかっこいいのに何かが勿体無い。
「………おい、クソ川」
そんな及川さんの後ろに、いつの間にかツンツン頭の人が鬼のような形相で立っていた。
「あっ、岩ちゃ〜ん!」
"岩ちゃん"と呼ばれたその人は、私と目が合うと軽く頭を下げた。
それにつられて私も慌てて会釈をする。
「どうしたんだ…その女子」
「この子、烏野のマネージャーなんだって!迷子になってたから案内してあげたんだよ」
「烏野のマネージャー?なんで迷子に……………ってかいつまで手繋いでんだよ」
「え〜、だってまた逸れちゃったらいけないでしょ?」
"だよね?"と言わんばかりに私に視線を向ける及川さん。
今居るこの場所が目的地なのに、何処に逸れると思っているのだろうか。
本当は私がパパッと手を離して烏野の方へ逃げて行ければ何も問題ないんだけど、案内してもらった以上そうも出来ない。
「…イエ、もう全然大丈夫ですから」
「困ってるじゃねぇかクソ川!!」
「岩ちゃんヒドイッ!」
"岩ちゃん"さんがフォローしてくれるも、及川さんが私の手を離す気配はない。むしろその整った顔の頬がむすっと膨らむにつれて、握る力が少しだけ強くなっていっているような気がする。
「…あの、ソイツ、うちのマネージャーなんスけど」
どうしようかと思考を巡らせようとした時、聞き覚えのある声がしてバッと振り返った。
…救世主だ…………!