第7章 * "Great King"
―ピーッ
握られた手はそのままで及川さんの後ろについて暫く歩けば、聞き慣れた笛の音が耳に入った。体育館はもうすぐそこだ。
「及川さん、ありがとうございました。では、私はここで…………」
早く試合を観たくて堪らなくなって、駆け足で目の前の体育館に向かおうとしたにも関わらず、及川さんが私の手を握る力は弱まらなかった。
「…あの、及川さ
「まだ離しちゃダーメ」
「だってもう体育館…」
「ダメ」
「………」
この及川さんの笑顔には逆らわない方が良い。
なんとなく本能的にそう感じた。
そして何故か手を握られたまま体育館に足を踏み入れた。
「「「キャーッ♡及川さ〜ん!!」」」
「びっ!?……くりしたぁ……!!」
今の今までおとなしく試合観戦をしていたであろうスタンドのお姉さま方の視線が一斉に集中する。それと同時に体育館中に響き渡る黄色い声援。
どうやら彼女たちは及川さんの熱狂的なファン…だそうだ。
及川徹、一体何者なんだ…。