第7章 * "Great King"
「影山くんっ…!!」
振り返った先には、きゅっと口を尖らせた影山くんと、その奥にこっちを見て不機嫌な顔をする烏野のメンバーが立っていた。
「やっほートビオちゃん久しぶり〜育ったね〜
元気に"王様"やってる〜?」
その様子を見た及川さんが、握ってない方の手をヒラヒラとさせながら貼り付けたような笑みを浮かべた。
…"トビオちゃん"?"育ったね"??この人は影山くんの知り合いなんだろうか。
でもそんなに仲が良さそうではなく、影山くんの顔からは警戒心すら感じ取れる。
「…いつまで握ってる気だ?」
「澤村先輩…!!」
顔見知り同士(?)の二人を見つめていると、急にぐいっと腕を引っ張られ、その反動で及川さんに握られていた手が解けた。
澤村先輩は笑っていたけれど、目が笑っているように見えなくて思わず身の毛がよだつ。
「あぁっ、綾乃ちゃん…っ!!」
「お前はもういいからさっさとアップいってこい!」
"岩ちゃん"さんの見事な攻撃が鈍い音をたてて及川さんに直撃し、及川さんは「岩ちゃんヒドい…!」と涙目で訴えた。
その後私の方を向いてはとても良い笑顔で「綾乃ちゃん、またあとでね」とだけ残して体育館から出て行った。
さっきまでの涙目がまるで嘘のようだ。
「悪いな、うちの及川が迷惑かけて…」
「いえ、大丈夫です!」
及川さんを見送ると"岩ちゃん"さんが申し訳無さそうに頭を掻いた。
なんていうか……恐いけど、良い人だなぁ。恐いけど。
「みんな心配してるからそろそろ戻るぞ」
「あっ…ハイ!!」
「…岩泉さん、あざっした」
「おー」
"岩ちゃん"改め岩泉さんが片手をひらりと上げて返事をした後、私はもう一度青城の方に頭を下げて烏野側のコートへ向かった。