第1章 ++いつもオレを求めていた++
「私も未だに夢を見てるんじゃないかと思う時があるわ」
そう言って月を見上げるアレス。
「一度フられた時は、死にそうなまでに絶望したものよ」
「む…それは、すまなかったといつも謝っているではないか」
「冗談よ」
意地悪く笑うその顔も、決して憎めない。むしろ惹き付けられて、目を反らせないのだ。
「ねぇ…あなた」
「何だ?」
アレスが足を止めたので、オレも歩みを止めた。
「今日はまだ触って貰ってないわ」
「……!?」
恥ずかしげもなく、アレスが『抱き締めて』と要求してくる。オレは慌てて周囲の気配を探り…いや、違うだろう。
「…もうすぐ実家に着く。それまで…」
「我慢出来ない」
渋るオレの唇を遮って、アレスが唇を寄せてきた。
「…仕方のない奴だな」
いつもの事とはいえ、アレスのペースに乗せられるオレもオレだと反省しながら、アレスを抱き締めてキスをする。
「ん…」
舌を交じらせながら、アレスの性感帯の一つ、耳を優しくこね回すと。
「ガイのキス、気持ち良過ぎてイッちゃいそう」
「続きはお前の部屋でだな」
頬を赤らめながら、そっと体を離される。
ぽんぽんと頭を撫でると、うっとりとアレスは微笑んだのだった。
これは──
キミはいつもオレを必要としてくれた話。