第2章 ++いつだってオレを想っていた++
納得してくれた風のアレスに、ガイは満足げに頷いた。
「それじゃ、帰るか」
そう言って、アレスをその腕に抱え上げる。
「ガイ?」
「お前にはおんぶよりも、こっちだろう?」
いわゆるお姫様抱っこをしながら、ガイは白い歯を見せて笑う。その笑顔に一瞬惚けたアレスだったが、彼の首に腕を回すと離されまいと抱きついた。
「……ガイ、愛してるわ」
「オレもお前を愛している!」
しみじみと呟くアレスに、高らかに宣言するガイ。それからガイは、アレスを抱いたまま瞬身の術で帰宅するのだった。
「…リー君、病院に連れて行ってくれる?」
「…はい。報告書はネジ達にお任せしましょうか…」
風のように去って行ったバカップルに、残された2人は疲労と困惑の表情で顔を見合わせる他なかった。
───この時の事を振り返ると、マイト•ガイは一つの後悔をする。
あの時、アレスの不安を取り除けるようにもっと努力していれば。
アレスの聞き分けの良さに、彼女の思う所を汲みもせず、自分の意見だけを押し通してしまった。
「……あなたももう若くないんだから、真っ先に先陣を斬るような事はしないでね」
「まだまだ若手には負けん」
あの時、嘘でも頷いていれば…
「…命だけは、大切にしてね」
笑顔の裏の不安に気付いていれば、彼女は忍への道を選ばなかったかも知れない。
そう思うと、オレは後悔せずにはいられないのだ。
──これは、
見てみぬふりをした過ちの話。