第3章 彼女の言い分
彼女は丹羽イツキを見上げて大きなため息をついた。
『呆れた』そう取れる表情。それに引き換え彼は『待て』をされた犬みたいに彼女の言葉を待っている。
二人の関係性。どうも彼女のほうが上に立っているようだ。
「それより、丹羽先輩。私の嫌がることしたら、どうなるか分かってますよね」
「...うん。もうしないから。
絶対しないから。だから、どっか行かないでね」
「はいはい。じゃあ、先輩があっち行ってて下さい」
「うん。話終わったらちゃんと声掛けてね」
「というわけだよ、トモちゃん」
不安げな表情を浮かべ、こちらをちらちらと見返しながら彼は先ほどまでいた場所に戻っていった。
キョーはあっけらかん、といった様子。彼の言葉に返事もせずに私に話し続ける。
分からない。彼は彼女に嫌がることをしないと言った。
それもそれに対して凄く怯えているようにも見える。
キョーは丹羽イツキに一体何をされたのだろう。そして丹羽イツキはキョーに何をされたのだろう。
彼の噂から察するに、浮気くらいしか考えられない。
「よくわからないんだけど?
キョー、浮気でもされて思いっきり制裁したの?」
「浮気?しないと思うよ。
この間さ、カレーに私の嫌いな野菜入れたから3日間口聞かずに過ごしたら泣いて謝ってきた。
嫌われたと思ったくらいで泣くんだよ。
俺の事捨てないでとか言ってきて、めっちゃおかしいの」
カレー?
カレーってあのカレーライスだよね。
確かにキョーはカレーライスに定番のあの野菜が苦手だった。
それに対して3日間も口を利かないというのは些かやりすぎな気もする。
そしてそれを受け入れ、自分の非と認める丹羽イツキもやりすぎだと思う。
この異様な関係性は彼女らではないと成立しないだろう。