第3章 彼女の言い分
「キョー。一緒に居たの、丹羽イツキ?」
「そうだけど?」
「何?付き合ってんの?」
「うーん。そうなるのかな? 最近いつも付いてくるから。
トモちゃんに言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ。
あんた、あの...噂、知らないの?」
「ああ、丹羽先輩。
誰でも食っちゃうやつでしょ?」
「知ってるの? 大丈夫?」
「ああ、大丈夫」
大丈夫?意味が分からない。
確かに彼女と丹羽イツキは中学の頃、一時期すごく仲が良かった。
あの噂はその数年後の話なので彼女は知らないのかと思えばそうではないらしい。
私は彼女に言わずにいたものだから彼女まで被害者になったのかと思ってしまった。
でも、この余裕そうな笑みはなんだろう。
「丹羽先輩。ちょっと来て下さい」
「何呼んでんのよ」
「いいから。いいから」
顔は整ってるし、スタイルもいいし。問題といえばあの噂くらい?
だけど、彼女の隣にいたときの彼はそんな無関心な様子は感じられなかった。
寧ろキョーが無関心なのではないか、と思うくらい。
「キョーちゃん、なに?」
少し離れたところがいたにも関わらず彼女の小さな声を聞いて彼はすぐさま此方にやって来た。
嬉しそうに笑ってる。と思う。噂が信じられない。
だけどこういう様子なのだからこそ、皆コロッと騙されるんだと身構える。
「あ、どっかで見たことあると思ってたんだけど。キョーちゃんの友達だった子だよね」
「今も友達です」
キョーは機嫌悪そうに彼の言葉を遮る。彼女がここまで強気な態度をとるのは珍しい。
私にこそ普通に話しかけてくるものの普段は大人しく話をするにも自ら話題提供をするよりは相槌を打って聞き側に徹するタイプ。
そんな彼女が対等に話せる相手はそういない。一度何故かと聞いた事がある。
彼女は『トモちゃんと仲良くしたいから私のこと知って欲しくなるんだよ』って恥ずかしそうに耳まで赤くして俯いてたっけ。
きっと、彼にも同じような感情があるからこそこういう態度を取るんだと思う。
今も友達だよ、って知って欲しいんだって思ったら嬉しくなった。相手がその丹羽イツキだとしても。