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【ハイキュー短編集】俺達はまだ若い

第10章 【赤葦京治】温もり


叫び疲れてストーブの横で暖まっていると心配してくれたのか、部員は私の所に駆け寄ってきてくれた。練習中悪いな。さっきはカッとなって叫んでしまったが、これはよくあること。ボールを避けなかった私のミスだ。


「大丈夫か.......?」
「大丈夫では無いですけど取り敢えずティッシュが欲しいです」
「分かった、今取ってくるな」

木兎さんはいつも元気でうるさいが何だかんだいって頼りになる先輩だ。どうせ今、さり気なくパシったのも気付いてないだろう。先輩なのにゴメンナサイね。
そう思いながら木兎さんの背中を見つめていると隣からけらけらと微かな笑い声が聞こえてきた。

「何でそんなに笑うんですか、木葉さんに小見さん」
「だってちゃん鼻声だからさ!!」
「鼻押えてるのが見えないんですか、失明してるんですか、御二方」
「やめろ、喋んな!!腹筋いてぇ」
「今からボール取ってくるんで思いっきり投げつけて、両方から鼻血出させてやりましょうか」
「だって止まんねぇんだよ!!!!」

と言って笑い転げる二人。何が面白いのかさっぱり分からない。ただ鼻声になっただけじゃない。
兎に角、まともな人に止めてもらおう。

「猿杙さん、あの二人を止めてください~」
「無理」
「そ、即答」
「じゃあ、鷲尾さんと尾長くん!!」
「……」
「無視ですか!!」

隣で二人が大声で笑い転げてる中助けてくれくれる人は誰もいない。怒りで不快指数を増すばかり。大体鼻声だけでそんなに笑う必要ないじゃない!と鼻を押さえながら強く思った。

木兎さんは戻ってこないし、先輩は助けてくれないし、いっそ血が止まるまで喋るのやめよっかな。と言うよりそれが普通か。、と自問自答する。少し気分転換に外へ出ようかと立つといきなり襲う寒気に背筋が凍る。ストーブで温まり過ぎたのか、急速に体が冷めていく



「うわ、さっむ」
「大丈夫?」

聞き覚えのある愛しい声を感じた。いつも、私の名前を呼ぶ声が。鼻を隠しながら振り向けばそこには彼がいた。

「赤葦?」
「なに?」
「どこいってたの~!」
「どこってトイレだけど……何かあった?」
「べ、別に」

返答を曖昧にしたせいか彼は首を軽くかしげこちらをじっと見詰めている。何だか恥ずかしい。少し熱くなってきた頬を隠す為地面へと視線を向けた。
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