第9章 【影山飛雄】チビ
自動販売機に向かおうと立ち上がれば一瞬ふらつく足元。暑さにやられたか。仕方ないと感じつつ木陰を出ればまた、直射日光が私達襲う。買いに行くのやめときゃよかったな。
暫く歩いて体育館の近くに設置されている販売期に来た。これがとてつもなく天国に見える。しかしふと私は思った。大暑だというのに何故あたたか〜いが置いてあるんだ。見てるだけで暑くなるじゃない。早く買ってさっきのベンチに戻ろう。
素早く200円を入れるとボタンのランプが点灯する。やっぱり先に影山に買ってもらおうかな。
「影山何飲みたい?お好きなの買ってどうぞー」
「おう、」
彼は軽く返事をするといきなり勢い良く牛乳と飲むヨーグルトのボタンを2つ同時に押しした。出てきたのはぐんぐん牛乳。彼いわくカルシウム系を飲むのは身長を伸ばしたいかららしい。もう十分デカイじゃん。意味わからん。
取り敢えず再度200円をいれ私もジュースを買おうとした。
「コーラ、コーラ、コ〜ラ〜……ってあれ?届かない……」
うちの学校の販売機ってそんなにサイズ大きかったっけ。と言うか販売期の大きさ自体異なるのがおかしいだろ。何て考えながら大きくつま先を立てて思いっきり背伸びをする。届かない。ギリギリまで足と腕を伸ばしてみるが無理だ。届かない。足がかすかに辛さで震える。
もう諦めるか、違うのにしようと思った刹那、上の方から手が伸びてきて上を向いている私の視界を遮り、ピッとボタンををした音と共にゴトンっとペットボトルが落ちる音がした。
後ろを振り向けば影山から腕が伸びていた。彼が押してくれたのか。助かったぁ。案外優しいところもあるのね。
「影山助かったありがと」
「いや、別にいいけどよお前、身長低すぎじゃね」
今の前言撤回。
「はぁ、何それ、どう考えても販売機がデカイだけじゃん」
「身長何センチ?」
「……ひゃ、150........。」
「チビだな。しっかり食ってんのか?」
「食べてるわよ、だからこんなに太って……」
太ってるんでしょ!っと言おうとした瞬間、ふと地面を踏んでいる感覚がなくなった。まるで浮いているよう、と思い下を覗きこめば何十センチも浮く足。どうやら持ち上げられているようだ。
ふざけんな!と影山を睨もうとしたら振り向けず
彼の次の言葉を大人しく待った。