第9章 【影山飛雄】チビ
真っ青な空に大きな入道雲がひとつポツリと寂しげに浮かんでいる。微小な風も吹かず太陽は私達の体内の水分を奪ってゆく。季節は7月
温暖化のせいか心なしか去年より今年のほうが暑くなるのが速い。
大暑の中、丁度近くにいたからだとか無理な理由をこじつけられ、地理のノートを集めて職員室まで持ってきてくれないかと頼まれた。本当は嫌だったけど仕方なく「良いですよ」などと返事を返してしまった。断れない自分が恨めしい。
頼まえたものを運び終わり一息つくと気分転換に外へ出た。実は校舎内に居るより外のほうが涼しい時もある。今日はそうでもないけど。
歩く途中木陰に木を囲んでいるベンチを見つけた。休憩がてらに休もうかと思いドカッとベンチに勢い良く腰掛けた。ついでに脚を豪快に開いてスカートを勢い良く扇ぐ。はしたないとはわかっているけど誰も見てないし、暑いからいいよね。
「あ"じーー。」
「本当に暑いよな」
「え……」
私以外誰もいないはず。吃驚したが多分気のせいだろう。と自分の耳を疑いつつ慎重振り返ればそこには同じクラスの彼が横になっていた。
「か、か、か、影山?!?!、いつからそこにいたの!!!」
気のせいじゃなかった
「あ"あ"?、始めっからここに居たけど、」
「うそぉー........」
「なんだよ、ここに俺がいちゃいけねぇ理由でもあんのかよ」
様子が少し荒れてきた。眉間に多数のシワが出来ている。心なしか声もいつもより低いような……。
「いいや、べ、別に……何も見てないよね」
「何も見てねぇーけど? 」
「はぁ、良かった」
「何がいいんだよ」
「別に影山には関係ないよ」
私の返事を聞くと影山は眉間の皺を一層濃くした。まずい、どうやら彼は私のせいでお怒りのようだ。不機嫌丸出し。彼は隠すことを知らないのか。取り敢えずご機嫌取りでもしたほうがいいかも。
私は話題を逸らすため別の話を持ち掛けた。コレなら多分喜ぶし、少しは収まってくれるだろう。私にはちょっと、キツイけど。
「あのさ、影山。喉乾いたから一緒に自販機にジュース買いに行かない?」
「は、暑いし面倒だから自分で行け」
「1本奢るよ」
「行く」
「ありがと」
ホントに本能に背かないなー。この人は。