第4章 【及川徹】花
そう言うと店長さんはまた店の奥へと行ってしまった。さっきより顔が笑っていたのは気のせいだろうか。何だ? と疑問が浮かび頭をかしげる。でも考えても無駄だと思った。はぁ、と不意に溜息が零れる。早くに会いたい。この花を渡したらどんな反応してくれるだろうか。瞼をそっと閉じ彼女の事を強く思い描く。
「お待たせしました!!」
あれから俺は花を受け取り、暫くして家に帰った。すっかり日は落ち辺りは暗くなって、相当時間が立っていることを示している。高校生だから何時までもいいや、なんて考えていたがどうやらそれは違った。
家のドアを開けると同時に玄関に母さんが立っているのが目に入る。母さんの顔は怒りに満ちていて鬼のようだった。それから散々叱られ、生憎に彼女がいることもバレ、もう全てが最悪だった。しかし、彼女に捨てられる事を考えれば苦でもなかった。
今は、彼女が来るのを待っている所。
「、遅いなー」
放課後部活を抜けだして教室に来るように伝えたのだが。しかも同じ部活なのに。こんなに時間が余るならせめてユニホームから制服に着替えたかった。
カーテンがなびき、隙間からは夕日が漏れ教室を照らしている。その中一人及川は俯いて、壁に寄りかかり立っていた。俺との約束忘れたのかも 。そんな事を考えていると急にドアが勢い良く開いた。
「徹、ごめん……遅くなって」
「~、約束忘れられたのかと思った……ってどうしたの、その痣」
「ん?、あぁ、これ?さっき階段登って来る時にこけちゃって」
「あはは」と痣を撫でながら笑う。彼女はとても弱弱しく、触れれば今すぐにでも壊れそう。「大丈夫?」と彼女の手を握って説いてみたけど、「心配しないで」と笑いかけてれる。何で俺を頼ってくれないんだよ。そんなに頼りないかな。なんて強く思っても彼女には届かないんだろうけど。
「ところで、徹……用って何?」
「今日、なんの日がわかる?」
「……?、火曜日だけど、それが?」
「今日、の誕生日だよ」
「あ、忘れてた、高校生にもなると誕生日とかあんまり祝わないからなー」
「え、毎年一緒に祝ってるじゃん」
「冗談だよ!」
こんなに会話をするのは久しぶりだ。素直に嬉しい。部活じゃ選手とマネージャーの関係。