第2章 踏んだ記憶はゴザイマセン
私は何も感じないけど、美少年の感じだと近寄っただけでも火傷しそうだし。
平気な理由は、私が異世界の人だからだろうけど…これは言ってもいい事やら悪いことやら…
ほとほと困っていると
「これ、アル君。その剣をしまいなさいよ」
と、何やら呑気な声が聞こえてきた。
なんだか、気が抜けるような声音にそちらに目をやると美少年の後ろから人が歩いてきた。
…お、お!ちょいワル親父きた!
灰色のスーツをビシッと着たその叔父様は、美少年の方を向きながらアル君…とたしなめるように近づいて行く。
美少年の名前もいただきましたー!
アル…似合っていますよ美少年。
内心ウハウハしながら、2人のやり取りを見ている。
叔父様、髪の毛は灰色っぽくてオールバックでキメていて恰好良い…それに、何か着こなしがイタリア人みたい。スーツに負けてない、ちゃんと着こなしてるよー。
無類の男性好きだが、年配の方も美味しくいただけます。むしろ、襲えます。
とか内心キャーキャーしてると美少年ことアル君が不満げに剣を下ろした。
「…ですが教頭、魔王が…」
「あぁ、分かっている」
叔父様、教頭なのですね!似合います。
「それについては、神獣が神託を伝えに来てくれた」
私の脳みそは嬉しさのあまりパンク一歩手前です。
神獣…好きです。見たいです。
「…神獣はなんと?」
剣は下ろしたものの、視線は私から外さないアル君。
君、できた子なのね。
「はじめは、魔王の孵化の防止のために使いの物を送った…と神託を残すと神獣は帰っていったが…」
教頭が何か言い辛そうに、私の方をちらっと見た。
「その後直ぐに、慌てた様子で神獣が戻ってきてな…『魔王が孵った』と。とりあえず、一緒に居る物は味方だから大丈夫だと…そして、神託の間まで連れて来いと」
あら、神様には直ぐにばれていたみたいですね…ははは。
「こいつが…この優男が味方?」
物凄く怪訝な顔で此方を見てくるアル君。
いや、その気持ち分からんでもないよ。私だって自分の事がまだきちんと把握できていないのだからね。
…あ、でも優男って事は男に見えてるんだな、よかった。
「魔王の孵化を止めにきた事は本当なんですよ。ただ、不慮の事故があって…」
すみません、と頭を下げるとアル君は何故かまた嫌な顔をした。