第2章 踏んだ記憶はゴザイマセン
可愛く返事をしてくれた子に申し訳ないんだが…
赤い目って、実際にみると不気味だな
っと、思ったりした。
ここは、よく読む小説のヒロインらしく
『あなたの目、綺麗な色ね』
と聖母のような言葉を言ってあげるべきなのだろうけど、つい私の口から出た言葉は。
「…目、閉じようか?」
と、笑顔で今見た事をなかった事にしようとした。
そんな私に赤ちゃんは不満げな目線をよこし「だぅ!」とため息をつかれた。
何この子、赤ちゃんのくせに言葉分かっちゃってる感じだし…魔王ぽいし…いや、もう魔王だろうな…あぁ最悪。
片手で赤ちゃんを抱き、もう片方の手で痛み出した頭をささえる。
「おい、返事をしないか」
孵っちゃったよ…と悲壮感をたたえていると美少年が苦々しい感じに話しかけてきた。
「ああ!ごめんなさい…ちょっと考え事してました」
二ヘラっと、私がよくするごまかし笑をすると
「ヘラヘラするな!今一度問う…そいつをどうするつもりだ!」
叫ぶと同時に、美少年が腰に手をそえた。
そちらを見ると、腰にぶら下がる物…帯剣してらっしゃるー!
「どうするも、何も…何なら貴方にあげますよ!この子!」
そうだ、当初の目的は病院に連れていきたかっただけだし…むしろ魔王なんて恐ろしいもの預けたい。
はい!
っと両手を前に突き出して美少年に近寄ると
ーージュ!
っと、何かが焼ける音がした。
え?っと思うと美少年が眉根に皺を寄せ、自分の右手を見つめていた。
…その右手の指先が焼けただれていた。
「わー!大丈夫?!あ、私が近づくといかんのか?」
慌てる私とは反対に、美少年は自分のポッケからハンカチを取り出し器用に指先に巻いた。
「……お前は、何なんだいったい」
訳が分からないといった表情で此方をみる美少年だが、警戒は解かず左手だけで剣を構え直し尋ねてきた。
何と聞かれると困る…何と説明してよいやら…
下手に魔王の孵化を防ぎにきましたー!
と言っても、魔王産まれてるし…むしろ私が踏んづけて孵しちゃったし?
魔王なんだよなー、もしかしたら違うとかないのかな…
「この子は…魔王なんですか?」
言い淀んで、挙句に質問返し。我れながらコミュニケーションがとれていないと思う。
「…その瘴気が物語っているだろう…むしろ、何故お前は平気なんだ?」
ですよねー。