第2章 私の居場所は
私は、ここに居られない。
それを悟った私はいつの間にか、全力で自分の部屋に帰っていた。
涙が溢れる。嗚咽が止まらない。この数年間は、幸せだった。もう、戻れなくても良いと思えるくらいに。
でも、私の運命はそれを許してはくれなくて。
ベッドに倒れ込んで考えた。今、私がしなければいけないこと。
(…ここから、出ていく。)
そうだ、どうせ死ぬなら悪足掻きしてやろうじゃないか。こういうことは思い立つが吉だ。
ベッドから思いきり飛び出し、一番身軽な服を着る。大きめの布を巻き付け、フードで顔を隠せば小さい旅人の出来上がりだ。
金貨を数十枚、小袋に入れ準備完了。
小さな机の上の紙に走り書きをして、窓の淵によじ登る。
「―それっ!」
一番近い木に跳び移る。ずるずると木を下りて城下町へ全力で走る。
これからの事なんて考えてなんかいない。生きる。ただそれだけが目的。
生きて、元の世界に戻るんだ。お金は雇ってもらって何とかしよう。歩くのは得意だし、滅多な事じゃ死なないらしい。何とかできる。
父さんの顔が見れなくなるのは悲しいけど、死んだら元も子もない。
きっと明日からは私は外にすらだしてもらえなかっただろう。今しか無かったんだ。
「約束された居場所なんて、あるはず無いんだ。」
まず、この城下町から離れることを考えよう。それまでは休憩はなるべく取らないようにしよう。
これからは疲労が半端ない筈だから、余計なことはかんがえないようにしよう。
だから…
「胸が、痛むのは気のせいなんだ。」