第1章 意味、わかんないよ。
へぇ、そんなことが…私が感心していると彼は不服そうな顔で言ってきた。
「ねぇ、ドレファスとヘンドリクセンは愛称で呼ぶのになんで僕は呼んでくれないの?」
え、なんか恐れ多いし。そんなこと出来ないわ…
「ね、僕も名前で呼んでよ。」
「え、あ、う…と。」
「兄さん、ワンナイトが困ってます。」
ど、どうしたもんか…
「お、お…」
「…お?」
「お父さん!」
「…へ?」
「「…ぶふっ!」」
ポカンとする彼と爆笑するヘンドリクセン、ぷるぷると堪えているドレファス。なんか、取り返しのつかない事を言った気がする。
「そ、そうですね…確かに、父親だったら…ふっ、名前では呼びませんね…ふふっ…!」
「だっはっは!ルシウス!お前本当に面白いな!」
「あ、う…ご、ごめんね?」
「…よし、わかった!」
各々が思ったことを口に出していると、急に立ち上がった。
そして、私を抱き締めてこう言った。
「僕が、ルシウスのお父さんになってやる!」
「え?」
「なっ…!」
「おい、マジかよ…?」
でも、彼は至って真面目で。
「サーシャは言ってた!もし自分に何かあって、ルシウスといられなくなったなら、変わりに育てて欲しいと!」
「…私も手伝います。」
「ドレファスがそういうんなら、俺も手伝うぜ。」
こうして、私の意思とは関係無く、お父さんが3人できた。
でも、私は嬉しい訳で。だって、壱夜西京極の時にも、私の父は他界していて。父親の温もりを感じたことはなくて。嬉しかった。ただ純粋に、嬉しかった。
―私が、11歳になるまでは。