第5章 ここに、居てもいいかな?
ちょっとだけ場を誤魔化すと、膨れっ面のエレインちゃん。ご不満なようです。
「…上ついたら教えてくれる?」
「もちろん。」
足取りも重く頂上につくと、エレインちゃんが目をキラキラさせながら座っている。逃がしてくれそうにない。
「…教えて?」
「聞いて楽しい物でもないんだけどなぁ…」
そういって、私の素性をつつみかくさず、でもトリップは混乱するから話さずに全部話した。
自分には5歳までの記憶がなく、気付けば周りが大惨事だったこと。お母さんは英雄級の聖騎士なこと、聖騎士に拾われてお城で育ったこと、そして、殺されそうな雰囲気になって逃げてきたこと、バンとは逃げてる途中に会って、つい最近まで一緒に旅をしたこと。そして。
自分には魔神族の血が混じっていて、どうやらずっとバンを傷付けていたこと。それに気付いてバンからそっと離れていったこと。
全てを話して、溜め息をついた。
「…面白い物でもないでしょ?私が魔神族だとか。」
「魔神族…数百年前に女神族によって封印された筈なのに…」
「何でかは良く知らないけど、混じってるんだって。…で、どうする?所謂魔物だよ?追い出す?殺す?」
…あぁ、自分で言ってて悲しくなってきた。私だって、1人は嫌なのに。
その時、バッと顔をあげたエレインちゃん。私の手に自分の手を重ねて、言った。
「わ、私、殺さないよ!追い出しもしない!だって…人の心を理解して、隣に座ってくれる魔物なんていない!」
「でも…」
「確かに、暴走は怖いけど…でも!この森にすんなり入ったんでしょ?」
「え、うん…」
「なら大丈夫よ!私、初めて会ったけど、ルシウスが大好きだわ!」
私は知らず知らずの内にエレインちゃんを抱き締めていた。大好きなんて、久しぶりだったから。
エレインちゃんは私の背中に手を回しながら優しく言った。
「ねぇ、暴走しちゃうんなら治そう?大丈夫、ルシウスならできると思うの。」
「でも…エレインちゃんに迷惑が…」
「そんなことない!私はルシウスと一緒に居たいから…出来ればだけど。」
私はエレインちゃんから手を離した。エレインちゃんは不安気に私を見ている。
「ねぇ、エレインちゃん。…私、ここに、居てもいいかな?…エレインちゃんが良ければ、だけど。」
「…!もちろんよ!」
ぎゅう、と固く手を握った。
心の隅でバンを思いながら。