第3章 こんにちは、良い天気だね
ぴょこ、と中を覗いてみた。
え、見張り?そこで居眠りしてるよ?
「…!」
「…ッ」
わ。バンが殴られてる。それを見た瞬間私は窓から2、3歩離れて…
「どっせーい!」
ぶち破りました。はい。
「なっ…誰だお前は!?」
「あ…ルシウス!?」
「はーい☆呼ばれてなくても出てきちゃうにじり寄るカオス、ルシウスちゃん参上♪」
…何か、似たような台詞を這い寄る何とかってアニメであったなぁ。
「ご予告通りバンを奪いに来ましたよー。使えないんでしょ?なら私に頂戴よ。」
「ふ、ふん…こいつは使えるからな…!お前なんかにはやらんわ!」
「…成る程成る程。バンを使ってそこら辺から金をちょろまかしてる訳ね。」
「なっ…貴様、なぜそれを!?」
「うっそぴょーん。知るかそんなもん。…あれれ?当たっちゃった?」
この私がそんなこと知ってるかっつーの。カマかけただけだわ、ぐへへ。
私はバンと向き合った。
「バン、どうする?」
「…へ?」
差し出された手を困惑気味に見つめる。
「私と来たいならこの手を取ればいい。嫌なら叩き落として。…君の人生だよ。君が決めて?」
バンは暫く戸惑っていたが、覚悟を決めたように私の手を取った。
私は自分の頬が緩むのを感じた。
「よぅし、じゃあ行こうか!」
「どわっ!?」
私はバンの手を引いて、元来た道を引き返した。後ろから怒鳴り声が聞こえたけど気にしない。
「けど、良かったの?もう戻れないよ?」
「今更かよ。…奪ったんだろ?きちんと責任は取ってくれよ。」
「…ぶふぉあ」
責任って。おま、それは女の子の台詞だよ。
なっ…そういう意味じゃねー!
知ってる知ってる。いやぁ、ピュアですな、バン君は。
からかうな、馬鹿!
さっきからかなり走っているけど、全然疲れない。寧ろ、足はどんどん動く。彼に会えた、それもある。でも、漫画で見る彼とは違う彼、何よりとびきりの笑顔を見る事が出来た事に喜びを感じている。
何処に行くかなんてアテも無いけど、今はこれでいいと思う。
「なぁ、どこいくんだよ?」
「知らなーいっ!」
まだ、その時じゃ無いから。苦しまなくてもいいから。少なくとも今だけは君の傍にいてあげたい。
ただ、この手を握って。