第5章 【青春は、死ぬまで終わらない】
それからと言うもの、ガイさんはお酒を片手に外郎やスルメをかじるだけで私と目を合わせようとしない。
もちろん会話もないので、私も誤魔化すようにお酒を口にする。ジュースみたいで飲みやすい。
ちらりとガイさんを見る。
普段のパワフルで熱血な彼からでは想像出来ないくらいの静けさだ。
……私みたいな美少女と二人きりになって緊張してる?それにしては、目に感情が見えてこない。むしろ何かに落ち込んでるような…
「キミ」
「は、はいっ!?」
箸でホッケをつつきながら、ガイさんが話しかけてきた。いきなりの事に、私の声は情けなく裏返る。
「名前を教えてくれないか?」
「夢野…アレス、です」
「夢野一族か…どうりで美人な訳だな」
ガイさんが、ようやく正面から私の顔を見てくれた。
あまりに強い眼力に、反らしたくなる気恥ずかしさを必死に耐えた。
もっと私を見て。私の名を呼んで。
しかし、ガイさんは表情を固くしたまま言う。
「単刀直入に言う。オレみたいなオッサンは、キミには相応しくない」
もっと自分を大事にしなさい。