第4章 【ガイさんが、欲しいのよ】
目に力が戻った私に気づいたのか、テンテンさん達がおもむろに席を立った。
「じゃあ、私達はこれで帰るわね」
「アレスさん、ファイトーっ!です!!」
「恋する乙女は龍をも殺すんだろ?ヒナタ様が確かそんな題の本を読んでいたしな」
なんだ、その本は。
…って言うか、いきなり皆いなくなっちゃうの!?ガイさんと二人きりになるにはまだ心の準備が…!!
「ま、待ってよ…」
「ガイ先生も、女の子に恥かかせちゃダメですよ!じゃ!」
そう言って、三人は瞬身の術で消えていった。……の割には、個室の戸が開けっ放しだけど。
「……」
空を切った私の手に代わり、静かに戸を閉めたのはガイさん。
「…そうだな」
漂う無言空間に、居心地悪そうに咳払いを一つして口を開いた。
何を言われるのかと、私の体に力が入る。
「とりあえずビールでも頼むか。キミも何か飲むか?」
メニュー表をペラペラと捲りながら言うガイさんに、全身の力が抜けていく。
…この人は本当に…
落胆と、しかし私を気遣ってくれているその気配に、私は俯いていた顔を上げて笑った。
「カシスオレンジでお願いします」
この人相手に、私のやり方は通用しない。
素面で向き合うのも、なかなかどうして緊張する。
最初で最後かも知れない二人きりの時間を堪能しようと、私は酒の力を借りる事にしたのだった。
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【補足】
ガイ先生は、ヒロインが未成年とは知らないのでお酒を勧めてます。木の葉では18くらいが成人年齢っぽいですが…
とにかく、お酒は20歳になってからですよ!