第1章 【結婚して下さい!】
「いかにも怪しい…ん?オレ宛だと?」
手にしたソレには、『マイト•ガイ様へ…ガイ様以外開けるな!』と丁寧な字の後に乱雑な筆が踊っていた。
ガイの太い眉が、眉間を無くす程に皺寄る。
(オレのこれまでの経験上、この手の物にはろくな物がない…)
脳裏に嫌な思い出が過ぎ去り、ガイはその巻物を無かった事にして放り投げた。
「あ!ガイさん!アンタ大事な依頼書に何て事してるんですか!」
「いや…あれは依頼書などではない。きっとオレへの嫌がらせに違いない」
「また逞しい男達からのラブレターが来たの?」
「黙れカカシィッ!それ以上何も言うな!」
過去の傷を蒸し返そうとするカカシに、右ストレートを繰り出す。が、カカシは何事もなくかわして避けると、ゴミ箱から例の物を拾い上げた。
「どれどれ…」
「触ってはならん!何が起きるか…」
「とりあえず見てみるだけ見てみよーよ」
完全に他人事でからかう気満々のカカシに反して、ガイは頬をひきつらせる。
「ま、待て!まずはオレが──」
名指しされている上に、殺伐とした警告が書かれている巻物に安易に触れたらどうなるか。
「まぁまぁ、可愛い乙女心じゃないの?」
可愛い乙女心の持ち主は、絶対にそんな巻物は寄越して来ない。