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【黒執事】短編まとめ

第2章 トリッキィヴィッキィ【グレル/微甘】


 薔薇の深紅、グレルさん赤色がお好きみたいだし(だってコートもタイも薔薇色だもの)、きっと喜んで持って帰ってくれるだろう。
「グレルさん、赤色お好きですよね? こちらもどうですか?」
 言うと、グレルさんはなぜか、しげしげと私の顔とそれを見比べはじめた。

「……あの、グレルさん?」
「いっつも思ってたケド、アンタのメイクってド地味よね」
 いきなりのボディブロー。静かにダメージを受けながら、私は苦笑した。
「……ま、まあ、そう、ですね……」
「ナチュラル通り越してスッピンに見えるし。リップもシャドウもチークもいっつも同じ色じゃない」
「職場なので、一応落ち着くように見せてるんですが……」
「女性職員は職場の華なのヨ! 自覚持ちなさい全くも~」
 なぜかプンプンしながら、グレルさんはそのコンパクトの赤いルージュを指先にとって、

「じっとしてなさいヨ?」
「……!?」

 私の唇に指で赤色を載せ始めた。

 そりゃあ私だって、ウィリアムさんや『セバスちゃん』とかいう害……悪魔にグレル先輩がきゃーきゃー言ってるのは知ってるし、だから私の事なんか一ミリも意識されちゃいないのも分かってる。
 でも、結局グレルさんだって男性で、男性に今、私は、メイクのためとはいえ唇を触られている、わけで……。
 冷たい指先。柔らかに触れられる唇。パニックと他の何かわからない感情で心臓が痛い。顔が熱い。ひぇえ、と呻きそうになりながらぐっと唇の形をキープしていると、グレルさんは満足げに笑って指を離した。

「ハイ終わり! 鏡見てごらんなさいヨ、」
「……や、やですよ……私派手な色似合わないんですって……」
「イイから。それとも先輩に逆らう気?」
 協会に就職してから見たどのお局様の笑顔よりも凄まじい笑顔で言うグレルさんに負けて、私は大人しく向けられた鏡を見て――固まった。
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