第9章 逢瀬のカタチ
あの日から時々、二人で逢うようになった。
食事したりもするけど、目的はソレだけ。
少なくとも、櫻井くんは。
分からないのは、その目的で何故私なのか、ってこと。
すごくスタイルがいいワケでもない(周囲にタレントやモデルがゴロゴロいるだろうに)
そんな若いワケでもない(櫻井くんより年上だし)
目を引く美人ってワケでもない(女優やモデルを見慣れている人なのに)
本当に普通の一般人なのに。
どうして抱くだけの目的で、相手が私なんだろう。
そして、目的はそれだけだと分かってるのに、拒めない。
櫻井くんの態度や言葉の中に、私への思いとか愛情なんてものは見当たらない。
恋愛の欠片はどこにもない。
一目惚れはありえない。
徐々にお互いを知っていってから好きになる。
と繰り返し言ってるその櫻井くんが、出逢っていきなり抱いたワケだから。
そんな対象じゃないってことだもんね。
起きてる間は鎧の上にまだ鎧を重ねてるんじゃないかっていうくらい、素の自分を出さないようにしてる気がする。
気を許すつもりもない、ってことか。
たまに眠りに落ちてる時だけ、少しだけ素の櫻井くんが見える。
年相応の、男の人。
むしろ、男のコのような無防備な寝顔。
寝てる時しか見せてくれないのか。
ケチ。