第6章 接近のカタチ
翔 「すみません、お待たせして。」
いつものグラビアで見てるような笑顔の翔くんが、そこに立っていた。
ひかり 「・・・・・・・・いえ。」
こっちは声もろくろく出ないのに、それを分かった上でなのか、余裕の笑顔で話しかけてくる。
翔 「それ、何飲んでるんですか?」
ひかり 「あ・・・・・これはスプモーニっていうカクテルですけど・・・・・」
翔 「へぇ、飲んだことないなー。どんな味?」
ひかり 「カンパリとグレープフルーツ?・・・だったかな・・・・・サッパリしてます。」
翔 「ふーん。そうなんだ。お酒は強い方?」
ひかり 「弱くはないと思いますけど・・・・・。」
訊かれたことに機械的に応えてる感じ(苦笑)
会話してるようで、してないというか。
中学の英語の教科書の会話文を何となく思い出す。
翔 「そう。じゃ、もう少しお付き合いどうぞよろしく(笑)」
口元に薄く笑みを浮かべる。
ちょっと周りを見渡した後、3分の1ほど残ってる私のグラスを見て。
数歩近付いて、真横に腰掛けて。
低い、小さな声で。
翔 「いっそ、部屋で飲みます?」
ひかり 「部屋?」
翔 「部屋。」
そう言って、人差し指を立てて床を指す。
翔 「このホテルの部屋。」
ニコッと笑う。
ドル誌の笑顔。
翔 「他の人の目もないし、僕もその方がいろいろありがたいんですけど。」