第1章 出会い
話が一通り終わったにもかかわらず、日向と影山が一戦交えて教頭のヅラを吹っ飛ばしてしまった。それに主将の大地さんが怒って2人を体育館から追い出してしまった。お互いチームメイト同士、自覚しろということらしい。
1人取り残されてしまったあたしはそっと大地さんの様子を伺う。
「あの…」
「ん?あぁ!悪い悪い。すっかり忘れてたよ。えと…」
「華蝶凛です。マネージャー希望の…」
「おぉ!マネージャーやってくれるのか?」
「えぇー!マジ?!やりましたね大地さん!潔子さんに凛、いいじゃないっすか。」
うんうんと1人納得したようにうなづく田中さん。
清子さんて誰だろ?話からして、マネージャーの先輩だよね?
「おいおい田中、凛ちゃんが引いてるだろ?ごめんな、何か。」
「いえ、あたしは大丈夫です。ありがとうございます。」
「何かあったらいつでも相談してくれな!」
「はい!ありがとうございます!」
菅原さんて優しいな。
そういえば、大地さんがさっきから難しい顔をしている。
「どうしたの?大地?」
あたしの視線に気付いた菅さんが尋ねた。
そこであたしは予想だにしなかった発言を耳にすることになる。
「道宮が言ってたんだけど、どうやら女子バレー部で有名だった天才セッターが、ここに来てるって噂なんだ。確か異名は…"黒蝶"」
あたしの心臓がドクンとはねた。
「あぁ。それなら俺も聞いたことある。弱小チームにいるにもかかわらす、才能が誰よりも飛び抜けてたんだろ?けど、女子バレーで有名な高校って新山女子じゃん?」
うん。そう。新山女子だよ。推薦来たもん。
「そうなんだ。いや、本題はそこじゃなくて、華蝶が"黒蝶"なんじゃないかって…」
「えぇ!それはないっすよ。大地さん!だって、マネですよマネ。だったら女子バレー部入ってますって。」
田中さんナイスフォロー!
「けど、条件が当てはまり過ぎなんだよ。身長、見た目、名前。」
「「名前?」」
確かにそう言われたらそこに突っ込みたくなるだろう。