第2章 サヨナラのあとで
柔らかな陽射しが空から舞い降りる春の日。
井の頭公園に花見に来た。
七井橋から池の両岸に咲き誇る桜を眺めるひかり。
その桜を、ひかりを、スケッチする。
陽射しに照らされながら振り返ったひかりは、白く眩しく霞んで。
消えるな!
思わず抱きしめる。
いつかは、いつもいつも俺を呼ぶその声さえも掠れて消えていくのだろうか。
心の中で流す涙は行くあてもなく、気付かれぬままそっと流れていく。
何を伝えればいい?
何て伝えればいい?
何も思い浮かばず、ただ、抱きしめる腕の力だけが強くなる。
願うことは、ただ一つ。
サヨナラを告げたあとでも。
どれだけの時間が流れたとしても、忘れないキミがいること。
忘れない。
忘れない。
忘れたくない。