第13章 Tears
吐く息が白い。
また冬が来たんだ。
この前まで緑の葉を厚く纏っていた街路樹は、いつの間にか薄ら寒い姿に変わってる。
耳に当たる風が冷たい。
この季節が訪れると、いつも我に返ってしまう。
そして、気付いてしまう。
翔 「ゴメン。何かやっぱり違うみたい。」
カノジョ 「・・・・・・どういうこと?」
翔 「他の、もっと優しいヤツ探して。ホントごめん。」
ごめん。
キミは彼女じゃない。
似てるかも、って思ったりしたけど。
やっぱり違った。
彼女の手を離してしまった季節の訪れが、あの日と同じ温度の風が、今付き合ってる人じゃ彼女の代わりにならないと囁く。
なんで、一緒に居たのがあの頃の俺なんだろう。
今の俺だったら、もっとやりようがあったのに。
もっと優しくできたのに。
もっと大切にできたのに。
あの手を離したりしなかったのに。
寝ぼけた自分が映る鏡の先に、あの頃の自分が時々透けて見えて、殴りつけたくなる。
あの頃の自分には見えてなかった、でも今の自分にはイヤというほど見える、尖がっていきがってた部分。
バカ。
お前のそういうところが、今こういう事態を招いてんだよ。
鏡の向こうのあの頃の自分が、少しだけ申し訳なさそうに眉をひそめる。