第1章 愛を歌おう
翔 「・・・・・あーんなことで、機嫌悪くなるんだなー(笑)」
笑うと出来る目じりの皺。
2回目だからって、首筋にキスしながらそういうこと言う?(苦笑)
ひかり 「・・・・・言い方が冷たかったし?」
唇を尖らせながら、モゴモゴ言ってる。
指先が伸びてきて、わざと意地の悪い動きをする。
翔 「・・・・・悪かったって(苦笑)」
喉の奥で困ったような笑いを鳴らしながら謝ってる。
胸を包む大きな掌は、愛しいと思う気持ちを分け与えるかのような温かさ。
ひかり 「いつか、・・・」
言いかけて、彼女の言葉が途切れる。
代わりに洩れた吐息が、頭の先から痺れさせる。
翔 「・・・・・え?」
途切れた言葉を探すように、顔を覗き込んでくる。
重なる肌から伝わる体温は、自分とのそれと境目が分からなくなる。
ひかり 「・・・・・いつか・・・絶対、外で、手・・・繋ぐからね(笑)」
苦しそうな、それでいて嬉しそうな笑顔を浮かべて、首に腕を回して俺を抱き寄せる。
包み込むように受け止めてくれるその胸に、体を預ける。
翔 「(笑)・・・・・・・・分かった。」
彼の声が、耳元で囁く。
唇が耳に触れる。
心も体も震わせるその声は、低く甘く響く。
夜明けの音がする。
朝日がカーテンの隙間を難なく縫って入り込む。
眩い白い光がその周りを照らす。
逆光に浮かぶ、横たわるシルエットに手を伸ばす。
シーツを巻きつけたその体を抱き寄せる。
照れた顔で笑う姿を、明けてゆく光が包む。
目の前にいるこの人が、この人だけが、進む先を照らす灯台で。
喜びも痛みも。
それらを与えるのも、包み込んでくれるのもこの人だけで。
だから伝えたくて、耳元で囁く。
愛してる。